F-FACTORY
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建築音響においては一度作ってしまうと改修するには莫大なコストが掛かってしまう為、将来性を考慮した充分な方向性の検討が必要となります。

レコーディングスタジオの様子

パワーブックG4とロジックコントロール等の機器により、 コンパクトなデジタルオーディオワークステーションを実現

浮き床構造:音源側からの振動を客席側に伝播させないために別々の浮き床構造とし、 境目には縁切りが設けられている

遮音壁の構造:プラスターボード15mm×3層で仕上げられることが多い

試写室の平面図:側壁ののこぎり形状により吸音と拡散を促している

  ●建築音響の方向性
西海岸の良好なダビング・スタジオなどに見られる建築音響の特徴としてナチュラルな音の方向性を示す傾向にあります。従いまして映画などの様々な作品を鑑賞するコンシューマーの立場にてホームシアターを計画する場合においては部屋特有の建築音響的な色付けは避け、透明感のあるナチュラルな音の方向性を目指して計画を進めることにより、映画の忠実なサウンドを堪能することができます。
レコーディングスタジオ、ホール、編集室などホームシアターの用途とは違う場合については、扱う音について考慮しつつ建築音響の方向性を明確にすることにより、充分な計画を検討することができるようになります。

●室内騒音の目標値について
THXでは、室内騒音の基準値はNC-30以下(推薦値はNC-25以下)と定められております。参考までにNC-20〜30という値は、日常生活における騒音状態としては「非常に静か」で電話等での会話に支障のない状況を示します。室内騒音や遮音、低域の制御等、建築音響に関するさまざまなやりとりを重ねて室内騒音の目標を決定する必要があります。ハイエンドな試写室においては、計画当初より室内騒音はNC-15を目標値として設定されることもあります。なおレコーディングスタジオのアナウンス・ブースでは「NC-10」を目標値として設定する事もあるため、建築音響を熟知した設計・施工会社においては困難な数値ではありません。当然、遮音構造は建築面積の大小に関わらず必須条件となります。

●施工条件の検討
静寂性を確保するためには、浮き床構造や遮音壁の設置が不可欠となります。そのため通常の内装工事とは違い、非常に重量がかかる構造となるため、床の積載荷重が許容範囲内かどうか、許容範囲外の場合には補強方法について考慮し、そのための費用についてもさまざま検討を行なう必要があります。

●空調設備について
アナウンス・ブースでは、収容人数はせいぜい1人か2人程度の利用人数となり、そのための空調設備はそれほど大がかりになることはありません。大きめのサイレンサーを取り付けることにより低い音からの消音が可能となります。しかしながら映画館や劇場、コンサートホールにおいては、建築規模も大きく状況に応じて少人数から満席状態まで快適な空調をコントロ−ルする必要があります。そのために設備は大型化し、それに伴う設置スペースの確保や設備そのものからの騒音について対処する必要があります。そのため室外機や室内機を設置するために充分なスペースを確保する必要があります。これにより大型になりがちな空調能力に余裕のある設備を選択することが可能となり、快適な空調制御(少人数から満席状態まで温度/湿度を微細にコントロール)を実現することができるようになります。

●浮床について
映画館や劇場、コンサートホールにおいては、厚さ10センチを超えるコンクリートで浮床が形成されております。また音源側からの振動を客席側に伝播させないため、別々の浮き床構造とし、境目にはエキスパンション・ジョイント(駆体伝播を起こさないための縁切り)が設けられております。このように目に見えない部分にも充分な配慮が成されることにより、客席側ではダイレクトな音圧を体感することができる環境が実現できるようになります。

●遮音壁、遮音天井について
近年のレコーディング・スタジオでは、音源自体のパワーが上がり音圧が高くなるに従い、低域までの遮音を確保するためには重量の重い材料が選択されております。従いまして音源側の遮音壁については、遮音性能および室内音場を考慮し規模や用途に合わせて、ブロック造やレンガ造などハードな材料で形成されております。

●遮音扉について
扉部分は遮音性能を確保するために枠周りの遮音処理が重要となります。具体的にはボードとの隙間にはコーキング処理を行ない、枠周りにはグラスウールの充填が施されます。また扉とゴムとの当たりの調整も必須となります。映画館の映写窓については1枚のガラスでは遮音性能の確保は難しいので、2枚のガラスを取り付け内部には空気層を設け角度を傾けて取り付けられています。

●内装仕上げと低域コントロール
映画館や劇場、コンサートホールにおいては側壁はのこぎり形状が施され、吸音及び音の拡散を促している場合が多く見受けられます。また、側壁の内部空間は、低域を制御するための吸音材などの仕掛けが施されております。表面は、クロスパネル工法(合板などでフレームを作成し布状の仕上げ材を巻き付けたパネル)を採用し天井面は、角度を付けた音響拡散板などが設置され、音場を繊細にコントロールしております。天井内部にも低域を制御するサウンドトラップなどの仕掛けが施されており、遮音壁及び遮音天井と同様に振動による2次音源が発生しないように入念な確認と補強が施されている。また低域を吸音するためには容積が必要となるため有効な空間利用が必要となります。

●建築音響の重要性
上記のようなさまざまな条件を経て建築音響を伴う建築物は完成しております。音響が伴う施設において電気音響の部分に目を奪われがちですが、システムの性能を100%発揮するための堅実な室内空間造りが再生環境を大きく左右することを理解しておく必要があります。また各工程(遮音壁、内装仕上げ等)においての振動対策や使用状況に応じた材料選択等も重要な要素となります。建築音響は「より良い音場を求めれば求める程」コストが大幅にかかる傾向にありますが、完成後に遮音性能の向上や音場調整等の各種改修工事を行なうことになりますと、電気音響設備の変更と違い莫大な出費と時間を要することとなります。近年における電気音響の進歩はめざましいものがあり先を見据えた音場を想定し、計画及び施工を実現しなければならない状況です。

●音響建築を取り巻く今後の方向性
ハリウッドのダビング・ステージはTHXのライセンスを取得していないものが多いのですが、その中身は「All most THX」と言われております。このことはハリウッドにおいて業界内では暗黙の了解事項として目標とするモニター環境が存在し、スタジオ間や劇場における再生環境が一定のレベルで統一化されつつあるのではないかと予想できます。日本国内においてもダビング・ステージ、試写室、劇場の各再生環境が現状を上回る基準で整備され、制作側が意図したサウンドを忠実に再現することができる再生環境が整うことにより、今以上に音楽や映画などを楽しむことができる可能性を秘めているのかもしれません。


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